主な資産は不動産だけという人のために作られた融資制度、リバースモーゲージ。
- 年金だけでは足りないから生活資金を確保したい
- 終の住処にする新居を購入したい
- 今の家に最期まで住み続けるためにリフォームしたい
- 老人ホームへの入居金を捻出したい
これらの理由から、利用を検討している人も多いのではないでしょうか。
毎月の返済は利息のみ、住み慣れた家を離れなくていいなどメリットが多く、利用者は年々増え続けています。
しかしリバースモーゲージの仕組み上、持ち家がマンションの場合、融資してもらえないケースも少なくありません。

この記事では、「リバースモーゲージの仕組み」から「対象になるマンションの条件」について紹介していきます。
リバースモーゲージとは?どんな仕組みなの?
リバースモーゲージは、高齢者が持ち家を担保に融資を受けることができる制度で、逆住宅ローンとも呼ばれています。
リバースモーゲージの特徴
毎月の返済額 | 返済なし、もしくは利息のみを返済 |
---|---|
返済方法 | 利用者が死亡後、担保となっていた不動産を売却することにより一括返済をおこなう |
融資額 | 不動産の評価額(主に土地部分)の50%程度まで |
利用できる年齢 | 55〜60歳以上(金融機関によって設定年齢は異なる) |
ここでポイントとなるのが、リバースモーゲージの融資額は不動産の土地部分の評価額によって決定されるという点です。
土地の評価額が低いマンションは対象になりづらい
土地部分が共有となっているマンションは、リバースモーゲージによる積極的な融資をおこなってもらうことができません。
これには、日本の住宅がおおよそ20年で価値がゼロになると言われていることが関係します。
とはいえ、マンションだからといって絶対にリバースモーゲージを利用できないわけではありません。
リバースモーゲージの対象になるマンションの条件
リバースモーゲージを利用できるマンションの条件は、以下のとおりです。
- 築年数が20年以内であること
- 立地が良いこと(駅から10分圏内がベスト)
- 住宅ローンが残っていないこと
- 土地の評価額が高いこと
それぞれ詳しく解説していきます。
築年数が20年以内であること
銀行からすると、利用者が亡くなるときにマンションが全く価値のない状態になっていると債務回収できず困ります。
そのため対象物件を築年数が20年以内のマンションに限定し、貸し倒れのリスクを軽減させているケースがほとんど。
金融会社によっては築10〜15年以内と条件が厳しい場合もありますので、注意してください。
駅近など立地が良いこと
駅から近い物件は資産価値が落ちづらいことから、マンションでもリバースモーゲージの対象になります。
徒歩10分圏内であることが一つの目安になりますので、最寄駅までの距離をチェックしてみてください。
特に、都心へのアクセスが良いと好条件で融資を受けることができます。
住宅ローンが残っていると利用できない
マンションに住宅ローンが残っていると、リバースモーゲージを利用できない場合がほとんどです。
利用できたとしても返済中の住宅ローンとまとめて借り換えることになるため、さらに審査が厳しくなるのはもちろん、金利が高くなる可能性もあります。
リバースモーゲージと仕組みが似ているリースバックという制度なら、住宅ローンが残っていても利用できます。
自宅を売却したうえで、不動産会社と賃貸契約を結んで自宅に住み続けることができる制度。
所有権は失いますが、リバースモーゲージのように担保割れのリスクはありません。
リースバックについてさらに詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてご覧ください。
リースバックのメリット・デメリット|評判やトラブル事例まで紹介
リースバックのメリット・デメリットから実際に不動産売却した人の評判、トラブル事例まで紹介しています。そもそもどんな仕組みなのかや家賃相場、リバースモーゲージとの違いも解説しています。利点だけで飛びつくと、思わぬリスクにさらされてしまいますので要注意です。
土地の評価額が高いこと
月日が経つにつれて価値が下がっていく不動産を担保とするリバースモーゲージでは、どうしても担保割れのリスクがつきまといます。
リバースモーゲージで担保割れした場合、一括返済を求められたり、相続人に借金が残ってしまったりする。
銀行側からしても、担保割れしてしまえば債務回収できない可能性が出てきますし、相続人に借金を背負わせるようなことをすれば評判が悪くなるため、避けたいと考えています。
上記で紹介した条件すべてをクリアしていないと利用できないというわけではありませんが、ある程度の価値があるマンションであることは必須条件です。
まずはマンションの評価額を知ろう
リバースモーゲージで融資してもらえる金額を知るためにも、低く見積もられて損をしないためにも、まずはマンションの評価額を把握しておくことが大切です。
マンションの評価額は、不動産会社に見積もり依頼すれば簡単にわかりますので、査定依頼してみましょう。
評価額が知りたいだけで不動産会社を利用してもいいのか不安に思われるかもしれません。
しかし不動産一括査定サイトの利用者は、いくらで売却できるかを把握する目的で使っている人がほとんどです。
ネット上で物件の基本情報を入力するだけで、複数社から見積もりを送ってもらえるサービス
以下のグラフは、不動産一括査定サイト「イエウール」を利用した人の使用目的についてのアンケート結果です。
イエウールの利用目的(アンケート結果)
クレームに厳しいイエウールなら、しつこい勧誘もなく、マンションの評価額を調べることができます。
担保割れのリスクに注意!デメリットもあることを覚えておこう
リバースモーゲージで担保割れするリスクがあると上述しましたが、その要因について掘り下げて解説していきます。
担保割れが起こる要因は、以下の3つ。
- 金利上昇リスク
- 不動産価値下落リスク
- 長生きリスク
一つずつ、わかりやすく解説していきますので参考にしてください。
金利上昇のリスク
リバースモーゲージは、あくまでも自宅を担保とした借金です。
そのため借りたお金に対して、金利がかかってきます。
将来、日本の経済状況が変わって金利が上昇すれば、利息も増えるということ。
現在は低金利が続いていますので、今後上昇して支払う利息が増額することは大いに考えられます。
不動産価値の下落リスク
土地の評価は3年に1度見直されるのですが、それに合わせてリバースモーゲージの利用限度額も変わります。
これによって不動産評価額を下回ってしまい、担保割れとなる可能性があるということです。
現在、日本の不動産バブルは終わろうとしています。
特に東京オリンピック終了後は一気に価値が下落するおそれがありますので、慎重に検討する必要があります。
長生きリスク
リバースモーゲージは年々、借入金額が増えていく仕組みになっています。
そのため長生きすると借入金額がマンションの評価額を超えてしまい、担保割れを起こす可能性があります。
例えば、評価額4,000万円のマンションを担保とした場合、利用限度額は50%の2,000万円です。
65歳から85歳まで、毎年100万円ずつ借り入れたとすると総額は2,000万円。
これ以上、借入をすると担保割れとなります。
「85歳まで生きないから大丈夫」と思われる人もいるかもしれませんが、厚生労働省のデータによると65歳まで生きた女性は、平均で89歳まで生きると言われています。
女性の場合、2人に1人が90歳まで長生きして、16人に1人は100歳まで長生きする時代なのです。
引用元: 厚生労働省
リバースモーゲージで担保割れしてしまえば、85歳以降にいきなり家を失ってしまうケースも考えられるということです。
とはいえ、もちろんメリットも大きい制度です。
リバースモーゲージを利用するメリットは?
リバースモーゲージを利用するメリットについて、改めて解説していきます。
リスクを背負ってでも利用するべきなのか、検討する判断材料としてぜひ参考にしてください。
老後の生活が豊かになる
リバースモーゲージの最大のメリットは、やはり老後の生活が潤うという点です。
多くの金融機関は、65歳以上の人には貸し付けをおこなっていないケースがほとんどになります。
そのため生活費が足りなくても、お金を借りることはできません。
リバースモーゲージなら、資産はなくても不動産があればお金を借りることができます。
利用者の死亡後に不動産を売却して借入金を一括返済するため、生きている間に返済義務が生じる心配もありません。
いらない不動産を処分できる
リバースモーゲージは、住んでいる家の処分方法を生きているうちに決められる制度です。
最近は実家を継ぐ人が減っており、不動産を相続人に残すという感覚はなくなりつつあります。
むしろ亡くなった親が住んでいた家の処分に困り、放置してしまう人たちによって空き家問題は年々、深刻化しているほどです。
リバースモーゲージを利用すれば自分たちの老後を豊かにできるうえに、いらない不動産を相続人に残して困らせずに済みます。
相続人の同意がないとトラブルになるので注意
子供などの相続人の意見を聞かずにリバースモーゲージを利用してしまうと、トラブルに発展しかねません。
もしかすると相続できることを期待しているケースもありますので、住まないだろうと勝手に判断せずに必ず確認しましょう。
住み慣れた家を離れる必要がない
単純に売却するのではなく、リバースモーゲージを利用するメリットは、住み慣れた家を離れなくていいという点にあります。
何十年と住んでいた家を手放し、今さら賃貸住宅に住むのは嫌だという人は多いのではないでしょうか。
一定の生活費を確保しつつ住み慣れた家に居続けることができるのは、リバースモーゲージの最大の特徴です。
公的機関と金融機関のリバースモーゲージの違いと使い分け
リバースモーゲージを利用したいのであれば、取り扱いのある機関を探さなければなりません。
まずは主体となる公的機関と金融機関が取り扱うリバースモーゲージの違いを説明したうえで、マンションでも利用できる商品について紹介していきます。
公的機関 | 金融機関 | |
---|---|---|
対象者となる条件 | 住民税非課税世帯などの低所得者 | 安定した収入または資産のある人 |
目的 | 低収入の高齢者を救済するため | 金利によって利益を得るため |
つまり、以下のように使い分けられます。
ただし公的機関は集合住宅を適応外としているため、マンションの場合は必然的に金融機関の一択になります。
公的機関の商品は集合住宅では利用できない
公的機関が取り扱う代表商品が、地方自治体が福祉的サービス(生活資金貸付事業)として取り扱っている「不動産担保型生活資金」です。
各自治体の社会福祉協議会が窓口となっています。
ただし集合住宅は利用対象外のため、マンションでは融資を受けることができません。
- 生活保護レベルの要保護高齢者向け「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」
- 被災者を救済するために作られた「災害型リバースモーゲージローン」など
東京スター銀行とみずほ銀行ならマンションでもお金を借りれる
リバースモーゲージをおこなっている金融機関の代表は、東京スター銀行とみずほ銀行になります。
どちらもマンションを対象とする商品を取り扱っています。
東京スター銀行 | みずほ銀行 | |
---|---|---|
商品名 | 充実人生 | プライムエイジ |
年齢 | 55歳以上(配偶者50歳以上) | 55歳以上 |
条件 | 年収120万円以上 | 安定した収入(年金を含む)かつ不動産評価額2,000万円以上 |
毎月の返済額 | 利息のみ | 返済不要(相続時に一括返済) |
金利 | 2.350% | 3.475% |
使用用途 | 自由(投資目的はNG) | 自由(投資目的はNG) ただし目的が決まっていると金利が2.975%になる |
利用可能額 | 不動産評価額の50%程度 | 不動産評価額の50%程度 |
対応エリア | 関東、東海、関西、福岡 | 東京、神奈川、千葉、埼玉 |
ここでポイントとなるのが、リバースモーゲージを利用して借りられるお金は不動産評価額の50%程度までということ。
また、その評価は銀行が決定します。
みずほ銀行の公式ホームページにも、以下のように記載されていますので参考にしてください。
ご自宅の評価額は、担保物件が戸建の場合は土地評価額、担保物件がマンションの場合は将来的な売却価格を踏まえたみずほ銀行所定の方法により評価した評価額となります。
銀行はなるべくリスクを回避したいのですから、わざわざマンションの価値を高めに査定することはありません。
つまり本来の価値より低く見積もられ、融資額が決定するということになります。
老後の生活費を確保したいとはいえ、低く見積もられて損をしてしまえば本末転倒ですよね。
リバースモーゲージを検討するうえで、現在のマンションの価値を知っておくことは、かなり重要です。
現在のマンションの価値を知りたい人は、しつこい勧誘がなく、見積もりを知りたいだけでも利用できるイエウールを使って評価額を把握しておきましょう。
管理人からの一言「ライフプランを決めるうえで大切なのはマンションの評価額を知ること」
リバースモーゲージを利用するかどうか決めるのにはもちろん、ライフプランを決定するうえで、現在のマンションの評価額を知っておくことは重要です。
思ったよりも評価額が低ければリバースモーゲージは利用できませんし、高ければリバースモーゲージ以外の方法も検討できます。
どちらにせよ、まずは自宅マンションの価値を正しく知り、最も適した方法で老後の生活資金を確保していきましょう。