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「マンション売却で赤字になった」という人のために、損益通算繰越控除特例という優遇措置が用意されています。

適用を受けることで所得税を0円にできる可能性があるため、必ずチェックしましょう。

とはいえ、「そもそも税金還付が受けられる人はどんな人?」「どうすれば還付を受けられるの?」という人がほとんどだと思います。

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この記事では、「売却損があったときに利用できる特例」から「特例適用の具体例」について紹介していきます。

マンションの売却損があったら税金還付を受けられる

売却損があったら税金還付を受けられる

マンション売却によって損益が生じた場合、税金還付を受けることができます。

大切な資産である不動産の売却で赤字になってしまえば、誰しも悲しくなるとは思いますが、一般社団法人 不動産流通経営協会による以下の調査結果を参考にしてください。

・売却損発生世帯は 85.2%、1,000 万円以上の高額売却損発生世帯は 41.8%
・売却損発生世帯の平均損失額は前年度から微増し 1262.6 万円

不動産売却によって損益が生じるのは、珍しいことではありません。

むしろ、ほとんどの人が赤字になっています。

譲渡損失の計算方法

マンションを譲渡(売却)したことによる損失は、以下の計算式で算出します。

譲渡損失 = 売却代金 – (取得費 + 譲渡費用)

取得費にはマンションを購入したときの代金を減価償却したものを、譲渡費用には売却するためにかかった経費を当てはめます。

マンションの譲渡損失は、買ったときの金額と売ったときの金額を比べるだけでは算出できませんので、注意してください。

たとえば、鉄筋コンクリート造のマンションを4,000万円で購入し、7年後に100万円の経費をかけて2,000万円で売却した場合、譲渡損失の計算式は以下のようになります。

  • 減価償却費 = 購入代金4,000万円 × 0.9 × 償却率0.031 × 経過年数7年 = 7,812,000円
  • 取得費 = 購入代金4,000万円 – 減価償却費7,812,000円 = 32,188,000円
  • 売却代金2,000万円 – (取得費32,188,000円万円 + 譲渡費用100万円) = マイナス13,188,000万円

このように売却損が生じた場合には、損益通算と繰越控除を利用して所得税の還付を受けることができます。

不動産を売って赤字になってしまったとしても落ち込まず、優遇税制を最大限、活用していきましょう。

マンションの取得費を減価償却する方法については、下記の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。

マンション売却でかかる税金はいくら?【計算方法と減価償却について】

マンション売却でかかる税金はいくらなのか、計算方法をわかりやすく解説しています。減価償却のやり方から具体的なシミュレーション例、知っておかないと損をする税制優遇についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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マンション売却で赤字になったときに利用できる特例

赤字になったときに利用できる特例

マンション売却で赤字になったときに利用できる特例は、以下の2つになります。

  • マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

漢字が並んでいて難しそうに見えますが、マンションを売って新たにマイホームを購入(買い替え)した場合と、売却のみの場合で利用できる特例が違うというだけで、いずれも損益通算と繰越控除ができる特例になります。

それぞれの適用要件などを詳しく解説していきますが、その前に損益通算と繰越控除について確認しておきましょう。

損益通算とは

損益通算とは、赤字になった金額を他の所得から控除することを言います。

たとえばサラリーマンがマンションを売却し、損失がでた場合は、その損失を給料から差し引くことができます。

損益通算の説明図

給料から損失を差し引くと課税所得が減るため、そのぶん所得税を減らせるということです。

繰越控除とは

繰越控除とは、損益通算で控除しきれなかった分を翌年に繰り越すことです。

最長3年間、繰り越すことができ、合計で4回の損益通算ができます。

繰越控除の説明図

繰越控除は確定申告が適用要件となっているため、マンションを売却した翌年以後も確定申告をおこなって適用を受けます。

住み替えたときに利用できる特例

「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、マンションから住み替えたときに利用できる特例です。

この特例の適用要件は、以下のとおりです。

適用要件

  • 住んでいる家、または3年前まで住んでいた家の売却であること
  • 売却する物件の所有期間が5年超であること
  • 所得が3,000万円以下であること
  • 売却の前年1月1日から翌年12月31日までに新居を購入し、実際に住むこと
  • 新居を返済期間10年以上の住宅ローンを組んで購入すること
  • 新居の敷地面積が50㎡以上であること

上記の要件を満たしていない場合は、適用を受けることができません。

マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例|国税庁

住宅ローンが残っている家を売却したときに利用できる特例

「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、住宅ローンが残っている家を売却したときに利用できる特例です。

上記の特例とは違い、新居を購入しない場合であっても適用を受けることができます。

この特例の適用要件は、以下のとおりです。

適用要件

  • 住んでいる家、または3年前まで住んでいた家の売却であること
  • 売却する物件の所有期間が5年超であること
  • 所得が3,000万円以下であること
  • 売却金額が住宅ローン残債を下回っていること
  • 売却時に住宅ローンの返済期間が10年以上残っていること

適用されるかどうかわからない人は、税務署に問い合わせてください。

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例|国税庁

マイナスが出たときに特例を受けるとどうなる?具体例を紹介

マイナスが出たときに特例を受けるとどうなる?

マンションの譲渡損失があった場合に特例の適用を受けるとどうなるのか、具体例を用いて説明していきます。

所得600万円・損失2,600万円のケース

給料などの所得が毎年600万円のサラリーマンが、マンションを売却して2,600万円の損失を被ったとします。

この場合、損益通算および繰越控除すると、以下のようになります。

損益通算と繰越控除の説明図

特例の適用によって、4年に渡って所得額を控除することができます。

本来なら、給料の600万円に対して所得税が課税されますが、所得が0円になることによって課税はありません。

ただし適用を受けるためには、毎年、確定申告で適用の申請をおこなう必要がありますので忘れないようにしましょう。

特例の適用を受けるには確定申告が必要

特例の適用を受けるには確定申告が必要

特例の適用を受けて所得税を減らすためには、確定申告をおこなわなければなりません。

通常、確定申告の必要がないサラリーマンも、適用を受けて節税するために申告をしましょう。

申告をするとその年の所得を減額、あるいはなかったことにでき、還付金を受け取れます。

申告時期はマンションを売却した翌年の2月16日から3月15日で、管轄の税務署に対しておこないます。

確定申告に必要な書類を揃え、期限内に提出しましょう。

マンション売却時の確定申告について詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてご覧ください。

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譲渡損失は申告不要って本当?

マンション売却で利益が生じた場合、売主は申告義務を負います。

一方で、譲渡損失が生じたときには申告義務はありません。

確定申告をしないと還付金を受けられず、損をするというだけです。

しかし申告不要だからといって、みすみす還付金を逃すのは勿体無いと思います。

場合によっては、何百万円もの還付金を受け取れるため、面倒でも確定申告をおこなうことをおすすめします。

マンションを売って利益を得た場合に申告義務があるのは、譲渡所得税を払わなければならないからです。

譲渡所得税について詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてご覧ください。

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管理人からの一言「売却損があった場合は税金還付を受けよう」

マンションを売ったことによって損失が生じた場合は、税金還付を受けられるため要チェックです。

申告不要という情報を鵜呑みにして、適用できる特例をスルーしてしまうと、損をしてしまいますので注意しましょう。